ヒトカゲと一緒に、自己肯定を考える。
おはようございます。内田です。
今日は、ちょっとした物語を共有します。
人間は本当は素晴らしいはずです。
だからこそ、その内部に溢れる素晴らしさ
を目に見えるカタチに表し出したい。
と思っているはずです。
その出力の過程で、
進化のタイミングがあります。
レベルアップとは違って、
これまでとは異質のものにすら感じられる。
だから、進化です。
ポケモンのヒトカゲになった気持ちで、
読んでみてください。
ある時、ヒトカゲがリザードに進化しました。
筋肉も増え、見た目もカッコよくなって、
ヒトカゲ時代の可愛らしさは薄れたものの、
メスにもモテるようになってきました。
そこで張り切ってレベルあげに熱中します。
時間はかかったものの30レベルも超えてき
ました。
しばらくして、さらなる進化を経験します。
「リザードン」に進化しました。
ヒトカゲから、リザードへの進化とは
比べ物にならない、変化を経験します。
見た目は全く変わりました。
リザードのときは、
ほのおタイプのみだったのに、
リザードンになった途端、
ほのお+ひこうタイプになります。
空を飛べるようになったのです。
空を飛ぶことを覚えたリザードンにとっては、
地上を歩くことしかできなかった、
ヒトカゲ・リザード時代が無意味にも感じられます。
そして、激しい虚無感に襲われます。
「これまではなんだったんだ。必要だったのか?」
空を飛べるようになったとはいえ、
地上において翼は重い足枷です。
走るのが早かった彼。
自分が
“自分らしさ”だと感じていたものを、
ほとんど失ってしまいました。
これまでの自分と、
新しい自分との間に挟まれて、
葛藤します。
しかし、彼の素晴らしかったところは、
これまでの努力を少しづつ取り戻していったところです。
新しい狩場を見つけ、レベルアップを重ねていきました。
そういえば、
仲間との関係も変わりました。
今まで、彼の狩り仲間といえば、
ヒトカゲとリザードばかりでした。
でも、大空を駆ける翼を手に入れた今、
これまで通りというわけにはいきません。
彼は孤独な気持ちになりました。
「誰も僕を理解できない…。」
そんなとき、
久しい仲間に出会います。
ヒトカゲ時代の友人です。
彼は自分よりも先にリザードンに進化していました。
リザードンの仲間が増えていく中で、
彼には新しい悩みが生まれました。
「僕はなぜ存在しているのだろう。」
ちょうど、レベル上げにも疲れていた時でした。
リザードンはみんな、
だいたい同じような見た目で、
同じ技を使います。
そんな環境に身を置くうちに、
自分が存在する意義を段々と失っていきました。
その頃から、
彼は自分のことに熱中しました。
誰でもない、自分になりたくて、
悩み苦しみました。
しかし、いっこうに
答えが見つからないのです。
ついに彼は暗い洞窟から、
出てこなくなりました。
真っ暗な闇、
静かな闇、
それでも彼には心地よい空間でした。
誰とも比べなくていい。
何かに追い立てられることもない、
存在を証明する必要も、
主張する必要もない。
そんな冬を越した春のある日
洞窟の外がこれまでにないほど、
明るく感じられました。
さらに春先にしては暑いような気がします。
彼が引きこもっていた洞窟は、
大きな森林の中にあり、
陽射しはほとんど入ってこないはずです。
毎日の繰り返しに、
少しの退屈を覚えていた彼は、
いつもと違う様子に興味を惹かれ、
動きはじめました。
その異様な状況を把握するのに
時間はかかりませんでした。
気が付けば大きな図体を揺らして
勢いよく外に飛び出していました。
青々とした広大な森は全面真っ赤に染まり、
轟々と音を立てて燃えていました。
山火事です。
彼は久しぶりに動かす
翼の感触を確かめながら、
上空にあがりました。
逃げ遅れている子がいないかと、
心配になったのです。
すると、小さな池の側に、
フシギダネの子どもたちと、
フシギソウが身を寄せていました。
どうやら、
学校のピクニックの最中に、
山火事に巻き込まれたようです。
フシギソウの先生が、
池から水を汲み取り、炎に向けて噴射して
懸命に子どもたちを守ろうとしていましたが、
勢いのついた炎は収まりません。
リザードンの彼は、
すぐさまそこへ降り立ちました。
とはいえ、
全員を抱えて飛ぼうにもあまりに数が多すぎます。
戻ってくるまで持つかどうかも分かりません。
そこで彼は、
自分の後ろにピッタリ着いてくるよう
フシギソウへ伝えると、
燃え上がる木々を、
切り裂き、なぎ倒しながら道を作っていきました。
なんとか一行は命からがら炎を抜けました。
フシギダネたちは
「リザードンさん、ありがとう」
「おかげでたすかった」
「死ぬところだった」
と口々にいいました。
フシギソウの先生は
「もう少し遅ければ、
みんな助からなかったです。
本当にありがとうございました。」
と、泣きながら、叫びました
炎に強い、
リザードンにとっては、
そんなに難しいことではありませんでした。
でも、こんなにも感謝される。
どうしてなのだろう。
自分の感情が追いつかない彼は、
ふと洞窟にこもるようになったきっかけとなった言葉
を思い出しました。
「僕はなぜ存在しているのだろう。」
その答えがここにありました。
彼は気が付いたのです。
「このフシギダネたちは、僕にしか助けることができなかったんだ」
ということを。